『ずっとお城で暮らしてる』 シャーリィ・ジャクスン

ある事件のために一家のほとんどを殺され、古い屋敷に完全に引きこもって暮らす生き残りの姉妹と伯父の物話。
主人公は姉妹の妹・18歳のメアリ・キャサリン、通称メリキャットです(なんとなくネコっぽい名前)。

物語はメリキャットの一人称で進むのですが、彼女の喋り方や考え方が18歳にしてはかなり幼いのがまず気にかかります。読み進めていくうちに、どうもメリキャットの精神年齢が家族が惨殺された時の12歳のままで止まっているらしいことが分かるのですが……。

こういう異常な心理の持ち主が一人称で語る場合、登場人物が被害妄想を語りだすと、読者は「彼/彼女は被害妄想を持っている」と認識して(作中世界の)現実とのズレに恐怖したりするわけですが、本作に関してはメリキャットの被害妄想が読者にも〝妄想だと認識できない〟という、恐るべきワナが仕掛けてあります。つまり、姉妹の周囲の人物が本当に悪意を持っているように感じられるわけです。

村人たちはメリキャットが本当に死んでしまえばいいと思っていそうだし、突然やってくる従兄チャールズは財産目当てで姉・コンスタンツに言い寄っているようにしか見えない。

精神の壊れてしまった娘に感情移入させられるという、これまでにない読書体験が得られる作品です。
(2007/11/08)

ずっとお城で暮らしてる (創元推理文庫)
ずっとお城で暮らしてる (創元推理文庫)

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