『ミルククローゼット』1-4巻 富沢ひとし アフタヌーンKC
 一番好きな漫画は?と聞かれて『エイリアン9』と答えるくらい、富沢ひとしの漫画は私の琴線に触れまくります。いかにも小中学校的な日常の描写とハードなSF設定の混合が大好きなのです。マイナーなSFですが『軌道通信』(ジョン・バーンズ)とか『スターストリーム』(ジェフリー・A・カーヴァー)も、同じ理由で好きだったりします。少女小説にも『僕らに降る雨』(竹岡葉月)というソレ系の傑作がありますね。こういうジャンルはなんていうんでしょう? いわゆるジュブナイルとは、微妙に違う気がしますし。
 作品の感想ですが、3巻の途中からの展開が壮絶。というか、私は読むのがつらくて、いったん本を閉じちゃいましたよ。ああいう、どうしようもなく無力な感じを描けるのは本当にスゴいと思いました。他にも本当に幻想世界っぽい風景とか、イタロ・カルヴィーノ的なハードSF描写とか、いろいろ見所はいっぱいでした。でも、やっぱり読む人を選びそうです……。人によっては意味が分からないかも。


『それいけ!! ぼくらの団長ちゃん』1-6巻 小野寺浩二
 とにかくアホすぎます(ほめ言葉で)。無駄に『漢気』にこだわる作者が素敵です。個人的には1−2巻くらいの変な応援団同士の対決をもう少しやってほしかったかも。団長ちゃんは『にゃー!!』な人なのでカワイイですね。悩んだ末に、『にゃっ、にゃっ』と一人で猫っぽくなっていく例のシーンが最高。


『ダンジョン・マスター』 栗橋伸祐 メディアワークス
 同名ゲームの漫画。挿絵が同じ作者だった、電撃文庫で出ていた小説の方(作・幸田佳子)とも微妙にリンクしています。
 内容ですが、とにかくティギーがかわいいです。『にぱ』と笑うのが可愛すぎ。魔法使いの女の子(魔法少女ではナイ)というのもポイント高いです。亜人好きの私としてはトカゲ人間のヒッサーもチェックですね(小説版よりも性格が丸くなっている)。ゲーム原作の漫画としてはかなり良い部類に入ると思います。


『HAL はいぱあ あかでみっく らぼ』1、2巻 あさりよしとお ワニブックス
 理系の専門屋さんが集まった飲み会ででてくる冗談・ホラ話を集めまくったかのような学習漫画(?)。真面目な科学の話に対するネタの入り具合が絶妙で、爆笑してしまいました。お気に入りは7話『生命の暗号DNA』、20話『宇宙戦争』、23話『アミノ酸』。あさりよしとおの描く女の子キャラが大好きな人間なので(私にとっての萌えの原点かも)その点でも楽しませてもらいました。


『特務咆哮艦ユミハリ』 富沢ひとし 幻冬舎コミックス
 今までの作品とちょっと雰囲気が違う……と思いきや、今までと同じバリバリ本格SFですね。というかこの設定、絶対フィリップ・ホセ・ファーマーの『リバー・ワールド』から発想したと思うんですが。あれは謎の川の両岸に原始時代から中世、独立戦争時代のアメリカ人、現代人、21世紀の未来人まで集められていたわけですが、その設定を日本海と日本人に置き換えたらどうなるか、それを試してみた作品という感じがします。
 ただ、『ユミハリ』はその地域の時間軸中で、最強の集団が集められている≠ニいう設定が加わっているので(だから呪術や予言を使う古代人が最強集団だったりする)、かなりハードな戦いが繰り広げられそう。今後の展開が楽しみです。

(05/10/16)


 最終巻を読了。ちょっと後半が性急で消化不良な感じもしますが、もともと富沢氏の作品は“問題の解決されなさ”具合に味わいがあるので、オチそのものはあれで良いのかもしれません。
 一見、列車型戦艦や潜水要塞が火を噴いてぶつかり合う架空戦記に見える『ユミハリ』ですが、実際に描かれているのは
「オカルト科学で神になろうとする人間たち」と「そんな人間に無力化されてしまう神々」の不条理神話世界だったりします。
 個人的には15分後の未来予想的中率99%という未来予報コンピュータ『ロカリオ』の設定が非常に好きです。SFにありがちな設定のようでありながら、不確定性原理やサイバーパンク的な社会の変化を盛り込んで、これだけマジメに描いている作品も珍しいのではないでしょうか。(『ロカリオ』が停止した後の相原の怖がり様とか、上手いです)
 世界観の描写がスゴイせいか、今作では人間関係の描写がだいぶ薄い感じです。人物としては駅員を軍隊風に統率する指令長とか、神秘的な発言とお茶目な発言が交錯する縄文巫女の阿蘇の姫君がかなり好きなんですが。
 あと、加々美のピンチに出現した幸子(大人バージョン)が咳払いしつつスカートを整える図がキュートすぎです。
 次回作にも期待ですね、、、、

(07/12/10)


『かたつむりちゃん』 今井神 まんがタイムKRコミックス
 かたつむりの擬娘化漫画。学校の怪談ネタとか、テンション高いやけっぱち気味な登場人物とか、かなり私のツボに入ります。
 掲載誌のまんがタイムきららは時々しか読まないので、この漫画が最初普通の学園漫画だったということを初めて知りました。かたつむり少女に怪談って、伊藤潤二の『なめくじ少女』を意識してるんだとばかり思っていたので。もし学園漫画路線でずっと進んでいたら、こんなにハマらなかったかも。オカルト・ホラー色の強い作品が大好物なのです。


(06/08/26)


『吸血鬼にちがいない』1-4巻 山田卓司 ノーラコミックス
 ほのぼの吸血鬼漫画。
 この漫画にはドラキュラやカーミラ以外にもアリス=リデルという某不思議の国のアリスそのまんまの女の子が登場するのですが、このアリスのキャラがとてもイイ。
 父親がアメリカの駐日大使でしかも対日強硬派らしいのですが、『アメリカも国益を守るために保護貿易に出るべきです。そんなわたしですがよろしく』などと(小学生のくせに)自己紹介するところは素敵すぎます。
 このアリスのツンツン具合が絶妙でして、鏡の中から出てきたもう一人の(気弱な)自分と対峙するエピソード『THROUGH THE LOOKING-GLASS』がすごくよかったです。

(06/06/08)


『ヨコハマ買い出し紀行』14巻 芦奈野ひとし アフタヌーンKC
 『ヨコハマ買い出し紀行』最後の14巻を読みました。
 いやもう、本当にイイです。
 作中世界は破滅的な方向に進んでいるんですが、作者が人間というか人類のことを最後まで見捨てずに信じきっているところに非常に好感が持てました。
 人間が滅びた後は、アルファさんたちロボットが人間の文明を引き継ぐのかな……。

 それにしても子海石先生が素敵です。 自分も先生のような老人になりたいと本気で思う。
 アルファさんに大事なアクセサリーを託すときの台詞に胸が熱くなりました。

 『私の若い頃の 目と足なの』
 『未来へ 連れて行って』
 『私は… 今は側にあるものをちゃんとみなきゃ』

 私は勝手に『廃墟モノSF』って呼んでいるんですが、そういう黄昏時の人類文明を描いた作品が大好きです。ロバート・シルヴァーバーグの『夜の翼』とか、コードウェイナー・スミス『人類補完機構』の西暦15000年以降の話とか。
 ただ、文明が完全に滅びているのは少し違うわけで、例えば『地球の長い午後』とか『黙示録3174年』とか『北斗の拳』だと私の『廃墟モノ』の定義からは外れてしまいます。
 『ヨコハマ』でお祭り騒ぎが落ち着く≠ニいうような表現がでてくるんですが、そういう黄昏時≠フ物寂しい、でもどこか綺麗な雰囲気がないとダメなのです。

(06/05/28)


『ベルセルク』ロスト・チルドレンの章 三浦健太郎 白泉社
 愛らしい妖精さんも好きですが、妖精のもうひとつの側面、悪魔になり損ねた堕天使としての邪妖精≠ニいうモチーフも大好きです。本当の意味でゴシックでロリータというか……。
 邪妖精モノの傑作としてはレイモンド・E・フィーストの『フェアリー・テール』、古典だと人魚姫の元ネタのひとつ、フーケー『ウンディーネ』があるわけですが、最近の作品では三浦建太郎『ベルセルク』が良質な邪妖精モノを描いてると思います。私の中ではロスト・チルドレンの章だけで『ベルセルク』を傑作評価しても良いくらい。
 パックやイバレラも普通に萌えるわけですが、ああいう妖精に関する深い描写もされているからこそ『ベルセルク』が妖精さん萌え漫画(?)と感じる所以だったりします。


(06/10/29)


『東京赤ずきん』 玉置勉強 幻冬舎コミックス
 せっかく良い(というか好きな)話なのに短い!というのが率直な感想です。せめて7巻、できれば10巻くらいのボリュームで読みたかったというのが正直なところ。1、2巻の雰囲気を複線を張り巡らしつつ6巻くらいやって、7-9巻で3巻後半の転≠持ってきて、最終巻で4巻の幻覚的クライマックスを展開したら私的傑作評価を下したんですが。

 それでも、天使/悪魔モノとしては秀作だと思います。過剰なエログロが物語の神秘的な雰囲気を恐ろしく高めていて、この作者以外にはなかなか真似できない作品に仕上がっていると思うのです。名も無い素朴な天使の言葉が、一番真理に達しているように見えるシーンもマル。
 あとはヴェルノが本当に良かった! 小悪党なところとか、変な喋り方(元ネタを忠実に再現している…)とかも好きなんですが、ローザを信頼しきっている様子にヤラれてしまいました。4巻にちょっとだけ出てくるローザと仲良さそうにしている場面も印象的です(実のところ、このシーンかなり謎なんですが。最後のコマは心中……?)。

 エログロについて。
 この作品のグロ描写はエロティックさを高めるために使われていると思うので、あんまり気持ち悪く感じなかったです。グロさって雰囲気が大事だと思いますので、不気味な雰囲気がつくられていたら普通の骨折の描写だけで異常に気持ち悪く思えるんですよね(楳図かずおの作品とか)。
 『東京赤ずきん』は雰囲気が萌えエロなので、グロ描写が甘いクッキーにかける塩≠フような要素になっているんでしょう。
 エログロと似た方向性、カワイイ系グロの極北を行くカートゥーン系『Happy Tree Friends』は結構グロく感じるんですが、あれはたぶんギャグシーンに狂気≠フ臭いを嗅ぎ取ってしまうからだと考えてます。

 最初の印象ではコレって『ヴァンパイアセイヴァー』のバレッタなのかなあと思ってたんですが、東京赤ずきんの方が全然かわいいです。バレッタは本性がマフィアというかヤクザだから萌えないので……(アレはアレでいいんですけど)


(07/02/04)


『聖剣伝説 レジェンドオブマナ』 天野シロ ブロスコミックス
 ダナエが超ラヴリーとかダナエが超カワイイとかダナエが超(略)は置いておいて……。
 スクウェアのRPG『聖剣伝説 レジェンドオブマナ』のコミカライズです。 かなり不思議な雰囲気の作品でした。シリアスな面も強いんですが、そのわりにはギャグ漫画のようでもあり……。ほのぼの、という表現もできそうですが、話の軸に据えられているシナリオが後味の悪さでは随一の『エスカデ編(妖精戦争編)』であるため、棘々しい部分も強い……。ただ、原作ゲームも大戦の深い傷痕を表面的なのどかさで覆った≠謔、な世界観を持っているので、その雰囲気を完璧に再現している点では、天野シロ氏がコミカライズに適任だったことは間違いないでしょう。

 『あなたが世界の闇に絶望することなく 再びここへ帰ってくることを…』
 『悪いことはなぜ起こるんだろう  悪い人がいるから 起こるんだろうか』

 聖剣LOMのシナリオの特徴は『ある人の信念に基づいた行動は、別の人間にとっては悪でしかない』という点をとことん突き詰めている所。その複雑な憎悪の絡み合いを、ギャグめいた表裏の無い行動で断ち切っていく天野シロ版主人公・トトは、確かにこの物語を解決に導く英雄の器を持っています。主人公の公式設定が全く無い原作から、トトのような主人公を生み出した天野シロ氏の力量に感服です。

(07/06/26)






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