『鼻』 曽根圭介

第14回日本ホラー小説大賞・短編賞受賞作。
昔の日本SFを思い起こさせる、という感想がよく見られますが、確かに筒井康隆の昔の短編っぽい作品で、あんまりホラーという感じじゃありませんでした。
とはいえ、読んでいて愉しい作品であることは間違いないので〝短編賞〟に相応しいともいえます(これがもし〝大賞〟だったら不満を感じたかも)。

収録作の一つ『暴落』は個人の評価が株式取引に使われるようになったら、というアイデアの作品で、なんだかドクトロウの『マジック・キングダムで落ちぶれて』に似ているなあと思っていたら、見事に解説で大森望氏が指摘しておりました。
若干違いをあげてみると、『マジック・キングダム~』のウッフィー制は取引というよりはpixivの閲覧者数+点数評価に近くて、ある人が実行したあらゆる企画への評価がそのまま財力になる、というポジティブ思想の制度ですが、『暴落』は完全に個人評価を商取引しており、それゆえに作中で主人公が見舞われたような酷い不正・不公平が生じ易くなっています。このあたりが微妙にホラー寄りなんですね。

他の収録作も含めて非常に完成度の高い作品ばかりなのですが、実のところあまりにもソツがなくて「この作者ならでは」の個性的な部分があまり感じられなかったという印象もあります。次にどんなタイプの小説を書くのか気になる作家です。
 (2008/05/06)

鼻 角川ホラー文庫
鼻 角川ホラー文庫

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