『暁の女王と精霊の王の物語』 ネルヴァル

150年近く前に書かれた、シバの女王バルキスとソロモン王の幻想的な恋物語・・・と紹介されている作品ですが、実際読んでみるとかなり印象が違います。

この物語の真の主人公は天才建築家のアドニラムであることは間違いないですし、テーマは恋物語よりも、人類の智恵・技術の賛美に偏っているように思われます。
そのせいで、神を篤く敬い人の力の限界を諭すソロモン王は悪役扱いです。

アドニラムは神聖なイスラエル王国に仕える身でありながらバベルの塔に思いを馳せ、スフィンクスのような人獣の偶像に美を見出す、神をも敵にまわすような恐るべき技術者です。
現代ならマッドサイエンティストという役回りでしょうか。
常人を遥かに凌駕する能力ゆえにソロモン王から宮殿・寺院の建造を一手に任されていますが、アドニラムは神を讃える寺院を造るより、神の創造物を超えるモニュメントを造ることに夢中です。

そこへやってきたシバの女王バルキス。
初めこそソロモン王との逢引に応じるバルキスですが、神よりも芸術や知識そのものを愛する彼女は、次第にアドニラムに興味を惹かれていきます。
そしてアドニラムの手による驚異のモニュメント〝銅の海〟でついに二人は出会い、予想だにしない運命の歯車が廻り始めるのです。

古典に属するファンタジーですが、展開がスピーディで登場人物も魅力的なのであまり古さを感じさせません。
ソロモン王もアドニラム(ソロモン宮殿の建築者)も旧約聖書が元ネタですが、詳しい知識がなくても雰囲気で読めると思いますので海外ファンタジーの雰囲気が好きな人ならオススメな作品です。
(07/01/16)

暁の女王と精霊の王の物語 (角川文庫)
暁の女王と精霊の王の物語 (角川文庫)

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