『宿命の交わる城』イタロ・カルヴィーノ

タロットカード(大アルカナとトランプの元である小アルカナ)を引いていって、引いたカードの絵柄を元に物語の展開を考えていくという、とてつもないアイデアから創られた短編小説集。
さらに引いたカードを四角形の行列で並べて、列の上下から見ていくか、それとも行の左右から読み込んでいくかでそれぞれ別の物語を考える、という凄まじいことをやっています。
なかなか口では説明しづらいので、ぜひ実際に本書を見てみることをオススメします。(詳細な挿絵や図があります)

例えば引いたカードが 『聖杯(ハート)の騎士』→『貨幣(ダイヤ)の王(キング)』→『貨幣のX』→『杖(クラブ)のIX』→『暴力(ストレングス)』の時、〝若い騎士は大貴族の父から莫大な遺産を相続し旅に出た。うっそうとした森に入ったところ、山賊に襲われた〟という風な話が紡ぎだされます。

カルヴィーノは現代的・SF的な科学技術を中世ファンタジーの言葉で美しく描写することにかけて随一の人だと思っていますが、この作品集の短編『吸血鬼の王国の物語』でも、その特長が発揮されてます。  闇のモノを嫌悪するあまり鋼鉄とコンクリートの都市を築いた王。しかし都市の中央にはいまだに自然のままの墓地が残っていて、そこには女王に化けた魔女と吸血鬼が……。  かなり私好みの話でシビれます。似た系統の話で『優柔不断な男の物語』も良いです。

ところで、この作品では『運命の輪』の解釈として〝輪と共に廻る人物たちに生えた獣の耳や尾を見るがよい〟という文章が出てきて、悪魔と契約を交わすと獣の耳が生えるという風な描写がされてます。

普段からネコミミ、ネコミミ言っている人間からするとかなり盲点でしたが、一般的な象徴学では獣耳って悪魔とか天罰とか、そういう意味にとられるものなんでしょうか。考えてみるとミダス王(ロバの耳の王様)がまさにそうですし。

悪魔と通じた者に獣の尻尾が生えるのは良いとしても(人間には無い物なので)、なぜ〝耳〟という発想がでてくるのか、獣耳好きの観点からしても追求すると面白そうなテーマです。(神の声を歪めて聞く、という意味で背信を表しているのかな……)
(06/11/16)

宿命の交わる城 (河出文庫)
宿命の交わる城 (河出文庫)

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