『ベガーズ・イン・スペイン』 ナンシー・クレス

ヒューゴー賞・ネビュラ賞をはじめ、たくさんの賞をとっている近未来SF。
表題作は遺伝子改変技術により、睡眠を必要としない子供たちが出現することで社会がどのように変化していくかを描写しています。

眠らなくていいので、遺伝子改良された子供たちは単純に、普通の人間よりも1.5倍くらいの時間を勉強や仕事などの活動に充てることができるわけです(作中ではさらに、睡眠がいらないことによる予想外の+αが示される)。
それによって生じる『有眠人』と『無眠人』の間の不公平は、次第に人種差別のような強烈な対立関係になっていきます。物語自体は、まさに有眠人と無眠人の間で決定的な衝突が起こる寸前の状況で締め。

テーマ自体は昔ながらの新人類モノなのですが、遺伝子改良時のいたずらにより、片方が天才の無眠人、片方が平凡な有眠人となってしまったリーシャとアリスの双子姉妹の関係や、偽善的な匂いのする反共産主義?の新経済理論『ヤガイイズム』の存在など、過去の同テーマ作品よりも、現実的かつ問題点が際立つように描写されています。
子供の遺伝子改良という話が一般化する時代が、私の生きているうちには来るような気がするのですが、そのとき、社会はきちんと対応できるのだろうかと心配になります、、、

他の短編では『ケイシーの帝国』が良かったです。壮大な銀河帝国が失われてしまう話。というか、自分の考えた銀河帝国のスペオペの出版を夢見る作家志望者(高齢フリーター)の話です。あのオチを読むと、空想は空想のままだから良いんだよなあ、としみじみ感じてしまいます。

(原文2009/11/23)

ベガーズ・イン・スペイン (ハヤカワ文庫SF)
ベガーズ・イン・スペイン (ハヤカワ文庫SF)

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