カテゴリー別アーカイブ: 国内文学

『Self-Refernce ENGINE』 円城塔

以前、『虚構機関』に収録されていた『パリンプセスト』を読んで結構気に入っていた作者の長編です。

<イベント>という現象が起きて以来、過去も未来も現在もめちゃくちゃになった時間軸の狂った世界で、みんなあまり深刻にならず、わりと楽観的に生きて(?)いる様を描いた作品。

雰囲気としてはカルヴィーノの宇宙ファンタジーの数学版といった感じ。巨大知性体の演算戦争とか数学や情報処理に関する話がたくさんでてくるハードSFかと思いきや、最初と最後の章のせいで、なぜか現代風のボーイ・ミーツ・ガールなお話としてまとまっているのが面白いところ。

この作品のテーマになっている『無限の可能性があるということは、あなたの望む結果は永久に起こらないかもしれない、ことと等しい』 ( 無限のモノの中から、望む一つが見つかる確率は 1/無限≒0 ) という逸話が、かなり心に残っています。

確率≠0%だから、決してあきらめてはいけないと思うべきなのか、確率0%だから、逆にあきらめがついて良い、気持ちを切り替えていけると思うべきか。

人生にも関わる難しい問題です、、、

(原文2010/07/04)

Self-Reference ENGINE
Self-Reference ENGINE

『土の中の子供』  中村文則

第133回芥川賞受賞作。

児童虐待物は最近散々やられている上に、創作はノンフィクションに絶対に勝てないんじゃないかという気がするので、この作品のテーマ自体が非常に不利なように思えます。あえてやるなら、よっぽど異質な視点を持ってくるか、『侍女の物語』のごとく本質のみを抽出したファンタジーにするか。

私は淡々と読み進めてしまったのですが、こういうテーマを扱うなら読めるだけではいけないと思うのです。作者に腹を立ててしまうくらい感情が揺さぶられないと……。

土の中の子供 (新潮文庫)
土の中の子供 (新潮文庫)