カテゴリー別アーカイブ: 海外文学

『不思議の国のアリス』 ルイス・キャロル/多田幸蔵 訳

ちくま文庫の柳瀬尚紀訳と同じく、中高生以上の読者を想定した訳になっています。 巻末に『※読後感をまとめよう』といった国語の問題みたいなものが付いているのがご愛嬌。

この本のアリスの性格はかなりツンツン。なかなか特徴的です。

『だれもあなたの意見を聞いてやしないわ』(ふざけたことを言う帽子屋への返事。“あなた”に傍点まで付いている)

『そんなものないわよ!』(糖蜜井戸の話を聞いて)

『安っぽい贈り物だわ!』『お誕生日の贈り物があんなのでなくてよかったわ!』(公爵夫人に『ためになる格言』を贈られて)

※ ※ ※

さて、この文庫(旺文社版)の表紙は有名なテニエル画ですが、なぜかアリスの服が赤色で塗ってあります(カバーデザインは小宮山逢邦という人)。赤服のアリスは日本だけの進化系じゃないかと考えていたんですが、この本も一つの有力な資料かもしれません。 (2008/09/07)

『エレンディラ』 G・ガルシア=マルケス

二つの大作『百年の孤独』と『族長の秋』の間に挟まる形で発表された短編集らしいですが、そもそもガルシア=マルケスの作品を読むのは初めてだったり。これを先に読んでよかったものか。

気怠いラテンアメリカの雰囲気の漂う不気味なファンタジーが多数収録されています。『幽霊船の最後の航海』、『この世でいちばん美しい水死人』など、題名からして不穏なものが多いです。

私が一番気に入ったのはやっぱり短編集のタイトルにもなっている中篇『無垢なエレンディラと無情な祖母の信じがたい悲惨の物語』。
最初の場面、14歳のエレンディラが独りでお屋敷の家事と祖母の世話をこなしている場面が強く印象に残っています。私のイメージだとエレンディラってメイドさんなんですよね。「はい、お祖母ちゃん」「分かったわ、お祖母ちゃん」っていう返事の仕方がなんだか妙に萌えますし。

亜熱帯にある古いお屋敷。
中庭の水槽の側につながれている、痩せた駝鳥の世話をするメイドさん、という図がシュールというかひどく幻想的で、脳裏から離れません。
(2007/08/01)
エレンディラ (ちくま文庫)
エレンディラ (ちくま文庫)

『猫とともに去りぬ』ロダーリ

ファンタジー好きの人にとっては『ファンタジーの文法』の著者として知られているロダーリの作品集です。収録作は一般的なファンタジーというより、皮肉の効いた大人の童話といった感じの作品が多いです。イタリアを舞台としている話が多いのも特徴でしょうか。

一番面白かったのは『カルちゃん、カルロ、カルちゃん あるいは、赤ん坊の悪い癖を矯正するには……』という短編(それにしても題名長い)。ラファティ『カミロイ人の初等教育』の逆の話、といえばいいでしょうか。超天才、しかもテレパシーやテレキネシスまで使える赤ん坊が生まれてきて、それを気味悪く思った両親や周囲の大人が赤ん坊を徹底的に〝凡人〟に教育する話です。
教育制度の矛盾を皮肉たっぷりに衝いている話で、興味深く読まされました。
(2007/03/18)
猫とともに去りぬ (光文社古典新訳文庫)
猫とともに去りぬ (光文社古典新訳文庫)

『カポーティ短編集』 トルーマン・カポーティ/河野一郎編訳

人に『好きな小説家は?』と聞かれたら、たいていカポーティの名前を挙げます。『ティファニーで朝食を』が映画化されてて有名なので、小説をよく知らない人とでもなんとか話のネタにできたりしますし。
本当はジェイムズ・ティプトリー・ジュニアとかコードウェイナー・スミスが好きです、と答えたいところなのですが、アレな世界の作家なので話のネタにならないですしねえ。

カポーティといえば『ティファニーで朝食を』も心のバイブルではあるんですが、幻想的な短編、例えば『ミリアム』や『夜の樹』などがより好みだったりします。

この短編集で一番良かったのは猫に関係した不思議な話『窓辺の灯』。ラストの光景を恐い・異常と見るか、幻想的と見るかで、かなり読後感が変わってきます。
カポーティ短篇集 (ちくま文庫)
カポーティ短篇集 (ちくま文庫)